田邉尚雄賞について

田邉尚雄(1885‐1984)は、東洋音楽学会の初代会長で、のちに名誉会長となった音楽学者です。田邉尚雄賞は、東洋音楽研究のいっそうの発展を促し、わが国における学術の発展に寄与するために、東洋音楽に関する研究の奨励及び会員の研究業績を表彰することを目的として昭和58(1983)年度から実施されています。この賞の生まれた経緯については、機関紙『東洋音楽研究第49号』(1984)に以下のように記されています。

昭和五十七年故田辺尚雄先生の白壽の祝賀に際して、先生より研究業績の表彰事業のための資金として、東洋音楽学会に五十万円の御寄附があり、次いで五十八年百歳および文化功労者の御祝に当り、五十万円の御寄附を頂いた。本学会はその御厚意をお受けし、定款第五条四の事業として「田辺尚雄賞」を設け、昭和五十八年度から実施することになった。

毎年、学会員5名から構成される田邉尚雄賞選考委員会が作られ、審査を行う前年の1月1日から12月31日までに発行された会員による研究業績を対象として選考が行われます。

最新の受賞者・授賞対象

2019年度、第37回田邉尚雄賞は、下記のように決定いたしました。

受賞者・授賞対象

柳沢 英輔

『ベトナムの大地にゴングが響く』
(灯光舎、2019年11月1日発行)ISBN978-4-909992-00-0

選考経過

2020年3月5日から3月29日までの期間にメール会議上で開催された第37回田邉尚雄賞選考委員会において、候補にあがった全6件の選考対象のそれぞれについて、慎重に審議を重ねた結果、上記1件が選ばれた。授賞式は本学会第71回大会で行われる予定である。理事会で承認された授賞理由は以下の通りである。

授賞理由

精霊が宿るという、人々の信仰に深く根ざした神聖な楽器─ゴング。本書は、その存在を知られつつも実態が不明であったベトナム中部高原地帯におけるゴング文化に着目し、映像人類学の見地からゴングをめぐる人々の営みを記録し、文章と映像・音声を組み合わせてその魅力を鮮やかに描き出した意欲作である。とりわけ、鋳造による独特のゴング製作の工程や、激減するゴング調律師の優れた技術に光を当て、音響のスペクトル分析と合わせてその詳細を明らかにしたことは、無形文化遺産の保存と継承の観点からも極めて貴重な記録といえる。一方で、一部地域の調査結果をもってゴング文化全体に敷衍する記述や、音響分析の方法には改善すべき課題も認められる。しかし、政治的事情から外国人の立ち入りが困難であった当該地域へ果敢に乗り込み、現地の人々との信頼関係を築きながら調査研究に挑んだ著者の功績は計り知れず、当該分野の研究促進に大きく寄与するものとして高く評価する。

近藤静乃(委員長)、配川美加、前原恵美、小西潤子、伏木香織

これまでの受賞者・授賞対象

  • 平成30(2018)年度、第36回田邉尚雄賞
  • 平成29(2017)年度、第35回田邉尚雄賞
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