田邉尚雄賞について

田邉尚雄(1885‐1984)は、東洋音楽学会の初代会長で、のちに名誉会長となった音楽学者です。田邉尚雄賞は、東洋音楽研究のいっそうの発展を促し、わが国における学術の発展に寄与するために、東洋音楽に関する研究の奨励及び会員の研究業績を表彰することを目的として昭和58(1983)年度から実施されています。この賞の生まれた経緯については、機関紙『東洋音楽研究第49号』(1984)に以下のように記されています。

昭和五十七年故田辺尚雄先生の白壽の祝賀に際して、先生より研究業績の表彰事業のための資金として、東洋音楽学会に五十万円の御寄附があり、次いで五十八年百歳および文化功労者の御祝に当り、五十万円の御寄附を頂いた。本学会はその御厚意をお受けし、定款第五条四の事業として「田辺尚雄賞」を設け、昭和五十八年度から実施することになった。

毎年、学会員5名から構成される田邉尚雄賞選考委員会が作られ、審査を行う前年の1月1日から12月31日までに発行された会員による研究業績を対象として選考が行われます。

最新の受賞者・授賞対象

2018年度、第36回田邉尚雄賞は、下記のように決定いたしました。

受賞者・授賞対象

田中 有紀

『中国の音楽思想:朱載堉と十二平均律』
(東京大学出版会、2018年9月21日発行)ISBN978-4-13-016037-7

選考経過

2019年3月10日(日)に開催された第36回田邉尚雄賞選考委員会において、候補にあがった全6件の選考対象のそれぞれについて慎重に審議した結果、上記1件が選ばれた。授賞式は本学会第70回大会で行われる予定である。理事会で承認された授賞理由は以下の通りである。

授賞理由

本書は、明代の学者で十二平均律の発案者として知られる朱載堉(1573-1619)の楽律論を基軸として、漢代から清代に及ぶ中国音楽思想の壮大な歴史を極めて整然と論述した労作である。朱載堉の楽律論を思想史に位置づけるために、音楽を経学として捉えた儒者たちの楽論を精査し、各時代を代表する著作との関連を実証的に検証している点で、朱載堉に関する先行研究を大きく凌駕するものである。中国における三分損益法や十二平均律の思想的背景を、中国哲学研究の成果を十分に咀嚼した上で検討している点や、研究の学際性が高く論述の内容が広範囲に及んでいる点も優れている。終章における西洋との対比では、西洋科学の思想史的背景について理解がやや不十分である記述が散見されるが、本書の中核である中国音楽思想史の分析の価値をいささかも低めるものではない。著者の広範に及ぶ文献の丹念な読解と緻密に練り上げられた構成によって、難解な音楽理論が明快に記述されている点も高く評価された。

選考委員:寺田吉孝(委員長)、梶丸岳、近藤静乃、配川美加、前原恵美

これまでの受賞者・授賞対象

  • 平成29(2017)年度、第35回田邉尚雄賞
これより過去の受賞はこちら